生後初めての祝膳
「お食い初め」は、生後初めて赤ちゃんを本膳(一汁三菜)につかせ、わが子が「一生食べ物に困らないように」と、両親の願いを込めて食べさせる真似をします。平安時代の五十日(いそか)の儀に由来し、「箸揃え」「膳揃え」「百日(ももか)」とも呼ばれ、地方によって男女・祝いの日・抱き方・椀の色などが少しずつ異なります。だいたい生後100日目・110日目・120日目に行われていますが、赤ちゃんの健康状態を考えて行えばいいでしょう。膳は母方の実家が贈り、男の子は朱塗りの椀、女の子は外側が黒塗りで内側が朱塗りの椀を、箸は柳の白木が用意されます。祝膳には、本膳に赤飯、尾頭付きの焼き物(かながしら・いしもち・鯛)と歯がための小石をのせ、二の膳には紅白の餅を5つ添えます。魚は頭が固くなるように焼きます。歯固めの石とは、川原から丸い小石を拾ってきて膳に据えたり、吸い物に入れたりするもので、歯が石のように硬くなるようにという願いが込められています。石には神が宿るとも考えられているのです。お祝いの席には、祖父母など身内を招きます。赤ちゃんに食べさせる役目を「箸役」といい、男の子には男性、女の子には女性があたり、いずれも年長者にお願いします。お食い初めの日は、それまで白い産着を着ていた赤ちゃんに色付きの着物を着せる「色直し」の祝い日でもあり、「色直し式」ともいわれます。節目として華やかな晴れ着や初宮参りの祝い着を着せておめかしをさせ、一粒でも食膳に上がったものを食べさせてあげることがお祝いになります。一粒でも食べればということで「一粒舐め」「一粒祝い」と呼ぶ地方もあります。ちょうど離乳食の始まる時期ですから、ベビーフードやおもゆ、果汁を食べさせることもあります。近親者、近隣の人、親しい人を招いて赤ちゃんを囲んで食事をするのは、まだまだ弱い赤ちゃんに皆の力を与えるためです。神様に捧げたものを祭りのあとに食べることを「直会(なおかい)」といい、神の力の宿った食物をいただくことで神と人との一体化を願うものです。人生における各種の行事で親しい人々を招き、一緒に食事をする習わしが多いのは、集まった人たちと食事を通して一体感を持ち、その力を得ていく(=民俗学でいう共食)という意味です。
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