日本の伝統的な婚約のかたち
結婚にあたっては、吉日を選んで「結納」の儀式が行われます。結納は、婚戚関係を結ぶ両家が酒や肴を持ち寄り、飲食をともにして喜び合う習慣の名残と考えられます。婚約は古くから「結納品」を取り交わすことで成り立つ、日本の伝統的な婚約のかたちであると定義してきました。相手に贈る祝儀物が「結納品」であり、結納は両家の婚約の成立をお祝いする大切な儀式です。結納が滞りなくすむと床の間に飾り、当日か別の吉日を選び、仲人・親族・友人などを招待し、婚約の成立を披露します。これを「結納開き」といいます。結納として贈るものは、長寿・幸福・繁栄・偕老(かいろう)・円満などを象徴するものが多く用いられます。結納品は、品数や取り交わし方が地方によって様々ですので、両家と本人たちで話し合い、納得がいく品を選びます。結納の品揃えは、基本的に次の三つに分けられます。@祝儀品・・・熨斗(熨斗鮑)、末広(白扇)、友白髪(麻)、高砂(嶋台) A服飾品・・・帯、式服、宝飾品、和洋服地、装身具 B酒肴品・・・昆布、するめ、鰹節、清酒、鮮魚(鯛・海老・蛤など) 以上の中から縁起のよい品数を奇数選びます。【長熨斗(ながのし=鮑の肉を薄く伸ばしほしたもの)は、不老長寿を意味し、祝儀のときに添えられます。末広(すえひろ=一対の白扇)は、純潔・無垢を表し、将来広く栄えるという意味です。友白髪(ともしらが=白い麻糸)は、ともに白髪となるまで夫婦仲睦まじくという意味です。子生婦(こんぶ=昆布)は、子宝に恵まれ、子孫繁栄を祈るものです。松魚節(かつおぶし)は、勝男節とも書き、たくましい男性の象徴として背節・腹節一対で贈ります。寿留女(するめ)は、昔は大切な保存食で、幸せな家庭をつくる女性の象徴です。家内喜多留(やなぎたる=清酒)で、本来は祝いごとに用いる樽酒です。】 結納品は大きく関東式(東日本)と関西式(西日本)に分けられます。関東式結納は、ひとつの台に結納品をのせるのが基本で、水引飾りもシンプルにつくられています。本式(9品揃以上)と略式(7品揃・5品揃)の2種があり、目録書はいずれの場合も本式の7品目録を使用します。略式の場合は目録通りの品数ではありませんが、一応贈った形にして、実際には略す方法です。関西式結納は現物を重視する傾向があり、水引飾りも立体的です。一品ずつをひとつの台にのせ「小袖料・柳樽料・松魚料・熨斗・末広」の5品目を基本とし、「松竹梅」「鶴亀」と呼ばれています。結納品は、婿方・嫁方とも支度する場合は同じところで購入し、相談した方がバランスがとれます。また目録書に書き入れる宛名は、親同士にするか本人同士にするか両家で相談の上決めます。仲人が使者として、両家それぞれに伺って結納品を取り交わすのが正式ですが、一般的には嫁方に全員が出向いて結納の儀式を行います。最近では、結婚式場やホテルの結納プランや、料亭などを利用して両家が一堂に会して行うことも多いようです。結納金(御帯料・小袖料)は多いければよいというものではなく、目安として新郎となる人の月収の3倍くらいが標準とされていますが、個々の事情を勘案して決めるのがいいでしょう。結納の記念として、永遠の愛を象徴するのにふさわしいダイヤモンドの婚約指輪を贈る人が増えています。婚約指輪の贈り物に対して、紳士服や時計などをお返しすることもあります。結納を納めるときに、両家の家族・親族を紹介する意味で、家族書・親族書を取り交わしますが、その場合は必ず両家とも同じように用意します。婚約した相手の家に遊びに行くときの手土産は、苦手なものがないかなど、その家の事情をよく聞いて選びます。今話題になっているものや、出身地の名産なども喜んでいただけるでしょう。
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